gibkiy gibkiy gibkiyが、過去に音源化された4曲を収録したEP『半死半生』を
tour ”hello,hollow,howlow”の各会場で発売する。
ヴォーカルkazumaとドラムのsakuraに取材したところ、
インタビュー中にさらなるリリースの情報が…!(取材は、7月1日に実施)
作品はもちろん、その活動ぶりも、独自の道を突き進む彼ら。
まずは、ツアー会場に足を運んで、音源を手に入れてほしい。
●7月10日からライヴ会場で販売する『半死半生』は、以前にレコーディングされた曲をまとめた作品ですよね。どういう経緯でリリースすることになったんですか。
sakura:話すと長いんですけど、2020年にサードアルバムを出そうとしてたんですよ。プリプロしたり、曲のストックをためたりして、あとは録るだけぐらいまで進めてたんですけど、そこでコロナが拡がって。いろんなものが停止しちゃって、リリースを見送ったわけです。
●ライヴはもちろん、バンド活動ができない状態でしたからね。
sakura:それからまた活動はできるようになったけれど、アルバムを出すタイミングを見失ってしまって。だけど新しい楽曲たちをどうするよって話になって、去年は3ヶ月連続で東名阪のツアーをやって、シングルをそれぞれ引っさげることにしました。それで今年は、そのシングルをまとめた形でのアルバムもいいよねっていう話も実は出てたんです。でも、いや、ちょっと待てよって。そういう形じゃなくて、アルバムはアルバムで、シングルはシングルで収めることになって、それなら入手困難になっている音源をひとつにまとめよう。それが、『半死半生』です。
●収録曲は、いまでもライヴで演奏されていますが、アルバムとして出すのはちょっと違うと。
kazuma:ピークがちょっと違うかなって。去年シングルとして出した「反吐」「生き血」「虫唾」とも何か違うものだし。この4曲の音源ついては、知らない人もいると思うから。
sakura:入手困難になってるから、再プレスするんだったら4曲まとめて、さらにリミックスとリマスタリングをして。それがリリースしたいきさつです。
●この4曲をまとめたものに、『半死半生』というタイトルをつけたのは、どういうところから?
kazuma:何て言うんですかね、そのまんまですね。死んでるけど死んでないっていうか。この4曲のイメージから、単純に感覚で出てきました。
sakura:それはすごく感じる。
●自分たちにとってこの4曲が、ということではないですよね?
kazuma:悪い意味じゃないですよ。この4曲にタイトルをつけるならっていう感じで、パッと浮かんだのが『半死半生』かな。
sakura:この4曲だから『半死半生』というタイトルが出て来たし、さすがだなと思って、妙に納得してる。4曲の並びはさておき、4曲をひとつの作品としたときにつけたタイトルとして、すごい妙案だなって。生きてないけど死んでもいない。これは精神的な話ですよね。肉体的なものじゃない。言葉で説明するのは難しいけど、ニュアンスがわかるし、納得できるんです。
kazuma:もしかしたら、メンバー的にはそう思えるかもしれないですね。別に死んでるわけじゃなくて(笑)、いい意味で進化してるんで。またこれからライヴでやっていくと思うんですけど、そこでまた生まれていくかもしれないっていう意味合いもあるし。
●4曲でひとつの形となっているものに対して、いい意味で過去に作ったもの、という感覚があるんですかね。
sakura:自分がミックスをやっていて、本当に録り直したいとかは思いましたよね。でも、ミックスに関しては、「掌る肉」が一番最初に録音した楽曲にも関わらず、一番モダンなミックスができましたね。録り方は明らかにいまのほうがいいんですよ。マイキングとか録り方とか、いろいろ学習してきたから。でも、ミックスしていると、過去に録ったものだけど、これは使えるとか、ここを直したらもっとよくなるとか思って。一番奥ゆきのあるミックスになりました。
●一番古くて、拙いとおっしゃいましたけど、そういう状態で録ったものでも、ミックスのやりようによっては仕上がりが変わると。
sakura:同じ素材で同じ料理をしたとしても、ちょっと塩加減を変えたりとか、たったそんなもんでも、味が変わるじゃないですか。その調味料の中には、いまだから手に入るけど、当時は扱うのが難しかったものがあったり。「掌る肉」は、自分的にOKなミックスができたし、「そして其れは半神半人、顔が落ちて「c」では無くなりました。」は80年代を意識したミックスにできたかな。
リリースツアー中に、さらにリリース?
●『半死半生』というタイトルをつけて、曲順については何か考えましたか。
sakura:kazuma君が時系列でいいじゃないって言い出して。さらに、時間軸に逆らうほうがいいっていうことでこうなりました。
●新しい曲からだんだん古くなるように並んでますね。
sakura:そうそう、時系列の逆で。4曲で、曲順を入れ替えてテーマを見出すのは難しいと思ってたから、俺も時系列でいいんじゃないかと思ってたし。それぞれの曲をレコーディングしてるときの思いは全然違うから。作った順番で並べて、過去にこの4曲を作りましたっていうのでいいかなって。kazuma君の一声で新しい順に並べて、最後に「掌る肉」になったのはすごくよかったと思います。
kazuma:曲順に意味を持たせると余計ブレるというか。そうじゃなくて、4曲そのものだけを見てほしい。そのときどきのものをパッケージしてるんで、逆にそれ以外のことを考えすぎるとなんか違うなって思ったから。
●聴いた印象としては、一番難解な「そして其れは半神半人、顔が落ちて「c」では無くなりました。」から始まって、比較的わかりやすくてノリのいい「強いられた無から孔から穴へ、マッチポンプの兎は屍」「連続性の細工」と続いて、最後は「掌る肉」で終わる流れは自然だと感じていました。
sakura:「強いられた無から孔から穴へ、マッチポンプの兎は屍」は確かにアッパーな感じかな。「連続性の細工」は今迄ライブではあんまりやってなくて、最近ちょっと久しぶりにやり出した。
●逆に、「強いられた無から孔から穴へ、マッチポンプの兎は屍」は、いつもライヴで耳にする印象ですけどね。
sakura:こういう曲だからgibkiy gibkiy gibkiyではやらないとかそういうことはないんだけど、「連続性の細工」はgibkiy gibkiy gibkiyからするとちょっとポップかなと思ってた面はありますね。イントロなしで、ドラムのフィルだけで、サビ始まりだったりするし。我々にとってはちょっと珍しい曲で、ポップチューンに感じてしまうところがあったりするから、あんまりライヴのセットリストに選ばれてなかったのかも。でも最近、kazuma君がやりたいって言ったんで、やるようになったかな。
●kazumaさんとしてはやりたい気持ちになってきたんですか。
kazuma:はい。単純に、セットリストを考えるときにやりたいなってふと思っただけの話なんですけど。ある意味、ライヴでやらないで寝かしちゃってたから、歌う感じとか演奏する感じがまた違うんですよ。それがまた自分にとって刺激的なものになったりするから。同じ曲をやっても違う風に感じられたり、変化してたりするんで、やってみたらどうなるかなと思ったらやりたくなったんです。だから、メンバーに対して、やりたいんでよろしくっていう感じだよね。
sakura:楽器チームとしてもやりたくないとかそういうのは別になくて、セットリストを決めるのはkazuma君だし、世界観とか色付けはkazuma君がイニシアチブを握ってると思ってるし、その人間がこれをやりたいって言うなら、全然やるよって。たまたまこれまでは自分たちにとって旬じゃなかったけど、いま旬になったんですね。コロナがなくて、サードアルバムがリリースされていれば、「連続性の細工」も収録されましたからね。
●コロナ禍を経て、活動がまたできるようになったからと言っても、発売を考えていたアルバムを考えていた形でさあ発売しましょうとはならないんですね。
sakura:アルバムを出そうとしてる当時と、いまでは作品に対する思いも違うし、そのとき作った楽曲でもうリリースしちゃったものもあるし。アルバムに関しては、いま白紙に近い状態なのかな。
●『半死半生』と去年出された3枚のシングルで一回出し切っちゃったと言うか、逆に言えばこれからということになるんですかね。
sakura:まだ聞いてないと思うんですけど、20日の名古屋のライヴで新曲のシングルを出すんですよ。
●え? おうかがいしてないんですけど…。
sakura:この記事、いつ出るんでしたっけ?
●ツアー直前ぐらいを考えています。(その後、ツアー初日に公開に決定)
sakura:まだ具体的に決定ではないんだけど、10日ぐらいなら、20日からリリースって言ってていいと思う。
作品に付いている匂い。サブスクや配信ではできないことがある
●それは、まだライヴでも演奏していない未発表の新曲ですか。
sakura:新曲です。一曲は幻のサードアルバムに収録するつもりだった曲をアレンジしまくって入れてます。もう1曲はサードアルバムとは別の曲で、ほぼほぼ書き下ろしのまっさらな曲ですね。シングルのタイトルが秀逸なんですよ。どう言えばいいのかな。口頭で言えば、「無題」だよね。
kazuma:うん、無題。
●字面だと違うんですか。
kazuma:字面? 字面っていうことかな。去年のシングル3枚と新しいシングルを並べたら、ああって納得する人もいるかもしれない。
sakura:これ面白いかなって。アルバムだったら集大成っぽくなるけど、そうではないし。でも、四部作というか、関連性を出してるんです。
●これが、最新の自分たちということになるんでしょうか。
sakura:まっさらな状態でレコーディングはしましたよね。最初はスケッチみたいな状態だった曲を、各パート別に録っていくうちにメンバーが色付けしたら、カッコいいと思えるものになっていって。現在進行形のものと、過去の焼き直しをしたものとの組み合わせの音源なのかな。
●今回のツアーは、単に『半死半生』を引っさげるだけではなくて、これからも見せる感じになりますね。20日以降のライヴでは新曲も演奏することになるでしょうし。
sakura:もしかしたら初日にやっちゃうかもしれないけど、実はあんまり深く考えてなくて。そもそもアルバムを引っさげてツアーを回りたかったし。アルバムはいまは出さないけれど、やっぱりツアーはやりたいし、新しい曲もやりたいから。
●今回の作品の話とはズレるんですけど、サブスクが一般的になって、アルバムで作品を聴くという意識が減ってきていると思うんですけど、アルバムという一つのパッケージに対するこだわりはやっぱり強いですか。
sakura:俺がバンドに憧れたガキの頃は、アルバムがあって、それが入口ではあったから。いまもアルバムという形に対しては、自分が憧れたものがそうであったから続けたいな。アルバム一枚一枚によって、それを聴いたそのときどきの風景が思い出せるし、だから本当にアルバムという名前がふさわしくて。音楽シーン全体で、我々がキッズだった時代とCDがすごく売れた時代と、いまは音源の意味合いは全く違うものになっているのはわかってはいるんだけど、アルバムというものがデフォルトという認識があるんだよな。CDの制作費を考えると、売れなければこんなに利益率の悪いものはありゃしねえけど(笑)。あとは、サブスクとか配信って、ジャケットのアートワークに触れることもできないですよね。だから匂いが付きにくいかな。ジャケット一枚だけでも、音以外の目に入る何かがあると匂いが付くし、それが伝わると思う。逆に言うと、配信とかサブスクではできないからこそ、伝わるものがあると思う。コストがかかったり、労力を増やさないといけなかったりするんですけど、自分の曲を愛して、みんなに匂いまで知ってもらいたいと思うし、その労力は使ったほうがいいのかなと思う。
●それが今回のシングルのタイトルの表記にも表れているわけですよね。kazumaさんはいかがです?
kazuma:正直言うと、サブスクとかあんまりわかってないですよ。わかってないけど、やっぱりアルバムが欲しいとか手に取りたいって思う。sakura君が言ったように、アルバム世代という感覚はありますよね。ただ、アルバムという形に関して言えば、去年リリースした「反吐」から始まったシングルについては、どこに終わりがあるのか、僕の中では漠然としてるから、こういう形でずっとやっていくのもありかなとは思ってる。
●こういう形というのは?
kazuma:極端に言ったら、シングルしか出さない。自分たちの流れを作れるんであれば、それがgibkiy gibkiy gibkiyとしての形になるのかなと思うし、それはアルバムじゃなくてもいいんじゃないかな。形は僕らが提示すればいい。だから、シングルをシリーズ化するのもありかなとちょっと思ってるんですよ。シングルを出すやり方が、僕は好きなんで。それは、gibkiy gibkiy gibkiyみたいなバンドがやらなさそうなことだからだけど。要は、やってることがブレてなくてカッコよかったら、どんなやり方でもカッコいいと思いますよね。
sakura:そうだね、シングルがある程度まとまったから、時系列で並べてベスト盤みたいなアルバムでもいいのかも。二人で話しているときも、kazuma君はこのやり方がすごくやりやすいっていう話は出てるし。シングルだと、一曲一曲に対して託す思いがアルバムとはペースが違いますよね。時間と力の使い方としては、シングルとして出していくのもいいのかな。いまkazuma君の話を聞いていてちょっとそう思った。
●サードアルバムがどうなるかはともかく、まずこの夏は、LOA-ROARと一緒の北海道も含めて、楽しそうなツアーが控えていますね。
sakura:恐君みたいな、同じ風景を見てきた同世代と一緒に回るのも楽しみかな。北海道でのライヴにしか来れないような人には、シングル三部作もしかりだし、入手困難になってしまってるミニアルバムの『鬼』もリミックス、リマスタリングして再プレスして持っていくんで、とにかく手に取ってほしいな。札幌まで行けると、ツアーだねっていう感じがさらにしますよね。
●8月25日のツアーファイナルでは、その後の展開が発表されたり?
sakura:それは、これからメンバー4人でZoom会議して話し合いします(笑)。
●計画的なのかそうじゃないのか、いまいちよくわからないんですけど(苦笑)。
sakura:結構行き当たりばったりかな。ここ近年は、わりとkazu君がアイデアを出してくれるんです。こうしたら面白いんじゃないですかね、とか。何となく役割分担がさらにできてきてます。リリースツアー中にリリースをするっていうよくわかんないことやってますけど、振り返ればもう8年ぐらいやってるし、再来年なんてもう10周年なんでね。
●アルバムにせよ、シングルにせよ、これからも楽しみにしています。