MIMIZUQ デジタルシングル「ケサランパサラン」をリリース!

INTERVIEW


MIMIZUQが、デジタルシングル「ケサランパサラン」をリリースした。
ファンタジックな雰囲気漂う曲調ながら、作詞したseek曰く、
タイに行った森 翼のことを思う、ファンの気持ちをつづったという。
さらに、制作にはAIがひと役買ったとのことで、
制作過程も含め、MIMIZUQの新しい一面を映す楽曲となった。
10月からのツアーの前に、「ケサランパサラン」に耳を傾け、
ライヴへの期待を膨らましておこう。

●「ケサランパサラン」をデジタルシングルにするのは、どういう流れで決まったんですか。
seek:年明けには、アルバム『時巡りの列車〜Prequel〜』を4月に出すことが決まっていたので、その次の展開を考えたんですね。翼君がタイに行くスケジュールを踏まえて、レコーディングを5月に決めました。
AYA:レコーディングのためにまずリード曲を決めて、あとは既存曲を録ろうというところから、「ケサランパサラン」を選んだんです。
seek:次のアルバムの後半戦は頭の中にあるから、新曲がいっぱいあったんです。それで、翼君が日本にいる間にレコーディングをいっぱいしておきたくて。ライヴでは演奏してるけど音源化されてない曲もあるし、やれるところからやっていこうと。

●アルバムを見据えてとなると、「ケサランパサラン」はそのリード曲とか先行シングルという位置づけになるんですか。
AYA:選んだときは、歌詞もなかったし、仮歌も入ってなかったですね。アルバムを出して、次はちょっと落ち着いた感じの曲がいいなと思って選んだのがこれやったんですよ。「OTOGI CITY」を出すこともできるけど、何か違うなと思ったんです。もうちょっとポップな方向にしたくて。「OTOGI CITY」はちょっとロックだから違うと思ったし、こういうポップな曲が今のMIMIZUQに合うんかなと思います。

●まずこの曲は、「ケサランパサラン」というタイトルやサビの歌詞がすごく印象的ですよね。(何か言いたそうなseekに)seekさん、何か?
seek:いや、自分でも書かへんタイプの歌詞かなと思うんで、みんながどう思ってんのやろうって気になって。

●だそうですが、皆さん、いかがですか。
AYA:(“ケサランパサラン”って)聞いたことある言葉やなと思って、何やったっけ?って調べました。
poco:なんか童話っぽいなと思いましたね。
AYA:歌詞を書いてもらったら、メロディがちょっと変わったんですよ。“ケサランパサラン”っていうサビのところのもとのメロディはハネてなかったんですよ。でも、歌詞ができてきたら違ったから、一回アレンジさせてもらって。それで、原曲よりテンポをあげて、シンセをたくさん入れて派手にしたんです。“ケサランパサラン”という言葉に合うように、歌詞に対してサウンドを寄せていったんですよ。この曲は、この言葉がキモだと思うんで。

●seekさん自身が、もともと考えていたメロディとは違う歌詞を乗せたということですか。
seek:自分が書いた曲やから、思いついた歌詞でメロを変えても怒られへんかなって。
一同:(笑)
森 翼:歌詞がまだない状態でメロディを聴いて、サビの頭のタラララって音が上がるところにどんな言葉が入るのか楽しみにしてたんです。メロディ大喜利みたいなところですけど、そこに入る歌詞で曲の印象がものすごく変わると思って。そこに、“ケサランパサラン”っていう、絶妙なワードが出てきたんですよね。音符よりも文字数が多い言葉を入れてきたのがすごいと思ったから、作家としてもっと仕事があるんじゃないかなって思いました。
seek:サビ頭4文字のところは、すごくベタなメロディだと思うんで、だからこそメロディ大喜利の難しいところなんです。
poco:俺は、そこの歌詞は4文字でくると思い込んでた。
森 翼:そしたら、俺らが思ってるよりも大きいフリップを出してきた、みたいな(笑)。それが「IPPON!」ってなったな。これはもう勝ちやって。

●確かに、シンプルなわかりやすい言葉がこのメロディに乗ると全然印象が変わりそうですね。
AYA:当初のメロディだったら、アコギとエレキでいこうかなと思ってたけど、その言葉が入って軽快になったんで、エレキだけにしました。歌詞がこの曲を引っ張ってますよね。

現代のAIの能力の高さがMIMIZUQの表現にもたらしたもの

●曲に漂うポップで、軽快な軽さが新鮮だったんですけど、それは“ケサランパサラン”という言葉から出てきたものだったんですね。
seek:そういうサウンドに合わせて、歌の方向性はいろいろ試してみました。
AYAデモのときは森君の歌がなかったから、僕がSynthesizer VっていうAIが入ってる歌声を合成するソフトで、女性の声を入れてみたんです。
森 翼:だから、仮歌は女の子が歌ってたんですよ。それがめっちゃいいんですよ。
一同:(笑)

●あ、いいんですね(笑)。
森 翼:今のAIは、ちゃんと感情も乗ってるし、この曲にちょうどよかったんですよ。無機質なわけじゃなく、でも暑苦しくもなくて。

●生々しい人間臭さがないところが逆によかったと。
森 翼:だから、僕が歌を入れるときに、デモがなんであれだけよく聴こえたのかを一回紐解かないとあかんと思って。AIのあいつがこの曲をどうやってあれだけ広げられたのか勉強しました。それで、みんなでこっちかなあっちかなって試したり、キーもいろいろ探ったり。
poco:AIの女の子の声でキーがちょうどよかったから、“キーは高い”って俺はずっと言い続けてたんです。だから、翼君という男性が歌うときは、もっとマッチするキーがあるはずって。それでいろいろ探してもらったら、結局そのキーが合ってたんですよ。結局、翼君は女性キーなんやって。

●歌詞の言葉や仮歌の声で曲のイメージが変わって、そこから完成形をめざしていくんですね。
poco:そういう相乗効果が、この曲はめっちゃ上手くいったと思いますね。森 翼でMIMIZUQをやってることの共有が皆にできてる中で、みんなが良い部品を持ち寄った結果だと思うんですよ。メルヘン感あるからね、MVの想像がつくような。
森 翼:これは、空でメリーゴーランドが回ってる感じですよね。でも、俺の中のイメージだと、AIのあいつが乗ってんねん(笑)。
一同:(笑)

●本当に、AIのインパクトが強烈だったみたいですね。
poco:僕も、同じソフトを買いましたもん。みんなが使ってることは知ってたけど、こんなにええのかと思って。今、活用してます。すごいっすよ。
森 翼:仮歌の人は、もう仕事がなくなるだろうね。
poco:ソフトがまた安くてね。

●ましてや人件費を考えるとコストが下げられますよね。
poco:絶対、24時間いつでもできるしね。

●調子が悪くなったりもしないし。
森 翼:いつだって万全でね。一昔前にAIが歌ってるのを聴いたときは、人が歌ってるんじゃないから感情がなくて、人間には追いつかれへんやろなって思ってたんですけど、今のソフトはAIで感情も分析してるし。
poco:弱くとか、エアリーとか。
AYA:それが、歌詞の文字ごとに選べるんですよ。
poco:デリートしたら、考え直してくれて、ちょっと変えてくれますしね。
seek:(人間のヴォーカルみたいに)機嫌悪くならへんねんな。
一同:(笑)

●人間だと、何回もやり直させるのは気を遣うこともあるでしょうからね。確かにすごいイノベーションですね。
poco:でも、特に翼君とかMIMIZUQは、AIの対極にあるんです。今、この場で起こっていることをそのまま歌ったりするから。

●その瞬間にあるものに対して、瞬間的に返せる。
poco:AIより計算が速いんです。即興は、今起こってる温度を歌詞にしてるわけなんで、対極なんです。そんなことをやってる翼君が、AIに対してそう言ってるのが面白いですよね。

●そこに刺激を受けてどう歌うか、アイディアをさらに出そうとする姿勢がすごいと思います。
poco:もともとの引き出しが多い分、そういうことを楽しめたのかなと思います。
森 翼:勉強になりました。ヴォーカルレコーディングでは、どう感情を乗せるかに重点を置いてきたんですけど、感情を乗せるからって伝わるわけじゃなくて、乗せへんほうが伝わることもあることを、AIのヴォーカルと向き合ったときに思ったんですよね。何をどれぐらい伝えたいかを逆算していくと、感情を乗せなくてもいいポイントがあったりする。それは、もしかしたらライヴでもあるのかもしれんから、もっともっと伝わる伝え方、バンドとしても曲としても歌としても、引き出しがいっぱいあるんやろうなと思う。だから難しかったけど、なんかすごいワクワクした。
poco:冷たいものに感動するんだろうね、虚無みたいな。

“ケサランパサラン”という言葉から導かれたサウンド

●では、楽器隊の皆さんは、レコーディングはいかがでしたか。
AYA:すんなり。
seek:何の感情もない。
AYA:AIや(笑)。
seek:いやいや、AYA君が、自分がもともと考えてたアレンジじゃないものにしてくれたから、そこにアレンジする楽しさがあったかもしれないですね。
AYA:コードとかノリとかを、全部変えたから。
seek:AYA君の曲をベースアレンジしてる感覚に近かった。

●AYAさんがアレンジで一番考えたのはどういうことですか。
AYA:森君が入ってから、最初はツインギターの名残があったんですよね。でも最近は、ギター一本でコード感とかを表現できるようになってきたと思うんで、コードを頑張ってます。シンプルではあるんですけど、変わったコードというか。
poco:ライヴでやる想定になってるのかもしれないね。

●ドラムに関しては? 
poco: ドラムはごくごく軽く、タイトになるようなイメージですね、選んでる音色とかプレイ、フレーズにしても。シティポップぐらい軽くなるように。

●pocoさんは、感情のこもった歌に寄り添うドラムという印象なんですけど、歌がそんなに感情的ではないと、ドラムもいつもとは違う感じだったりするのかなと感じたんですけど。
poco:そうですね、そうだと思います。僕はどちらかというとパワーヒッターだと思うんですね、ビートロックとか刻むタイプのドラムなので。それだと、丁寧に歌ってる歌に対してはちょっとトゥーマッチというか。だから同じリズムでも、違うプレイを選べる年になってきたんだと思います。野球で言うと、スピードが出てない球でも抑えられる投げ方ができるようになったということですよね。手を抜きながらやるという表現は変ですけど、年齢を重ねてきて、疲れずに弾ける技術がだんだん付いていくんです。若いときは、力が残っている限りやるぞ、みたいな感じだったんですけど、そうじゃなくて、永遠にできるような力の入れ方をするようにコントロールできるようになってきたんです。最近、田澤(孝介)君も同じことを言ってて、“ヘトヘトにならないからまだまだいけんじゃんみたいに見えるけど、そういうふうにコントロールしてるんや”って。確かにそうなんです。ヘトヘトになる必要はないよなと。今でもドカーン!って全力でやるときはありますし、やるんですけど、この曲はそうじゃないなと。

●サウンド全体が、“ケサランパサラン”というものの雰囲気にすごく合ってるんですよね。ふわふわしていて実態があるのかないのか、つかめるのかつかめないのかわからないみたいな。今までのMIMIZUQの曲とか表現と違って、ちょっと余裕があるような感じというか。
AYA:確かに。
poco:俯瞰してるっていうか。

●そう考えると、やっぱり“ケサランパサラン”という言葉はすごく大切なポイントになってますね。
seek:歌詞を書いた順番としては、“ケサランパサラン”というワードは後から出てきたんです。書いたのは2月で、翼君がタイに行ってるときで、翼君のファンの人は今どう思ってるんやろうっていうテーマで書き始めたんですよ。今は配信だってあるけど、やっぱり距離的にね、翼君のファンの人は精神的にきついだろうなと思って書いたんです。そういう内容を翼君が歌ってるのは、違和感がある状況なんですけど。

●あえて言うと、翼さん自身がその原因を作ってるわけですからね。
森 翼:サイコパス曲や(笑)。
一同:(笑)
seek:そういうテーマがあったから、僕としてはメッセージソングに近いぐらいリアルな歌詞なんです。それが、“ケサランパサラン”というワードが出てきたことによって急、にファンタジーソングになったんですよね。

●でも翼さんって、つかみどころがないところが“ケサランパサラン”と重なるかも。
森 翼:やっぱりケサランツバサランとしてはね。
一同:(笑)

どんな人に向けても、音楽人として僕らと聴く人とをつないでくれる曲

●「ケサランパサラン」は、ライヴではどんな感じになりそうでしょう?
seek:あんまり今までにないタイプの曲やと思ってますね。めっちゃノリがあるタイプの曲じゃないけど、ライヴのラストとかで銀テープが飛んでるイメージもある。
AYA:どこでも使えそうですね。一曲目でも最後でも中でも。「MONSTER GIRL」に近いですよね、あの曲もどこでもいけるから。
seek:確かに温度感的には近いかもしれないです。
poco:肩肘張らない感じがね。
AYA:「孵化」だと、最初か最後みたいな感じがあるけど、これはどこでもいいです。

●そういう曲調だから、最初に曲を聴いたときに、どういうところからシングルに選ばれたのかなと一瞬思ったんですよね。「アイラブユーの世界」はいかにもシングル、みたいな曲だったので。
poco:「アイラブユーの世界」から、「ケサランパサラン」の流れは、ポップスとしてのベタなど真ん中をロックバンドが作るという方向性が提示できてると思います。ロックバンドが提案するポップスの王道とは、ということなのかな。
森 翼:「ケサランパサラン」をリリースするのは、バンドとして器が大きくなったのと同じような感じで、曲が大きくなったということかなと思います。「MONSTER GIRL」と毛色は似てるかもしれんけど、この曲はライヴハウスでどの曲順でも歌えるし、インストアライヴとかフリーライヴとかでも歌える曲やと思う。どういう人に向けてでも、曲がちゃんとステージで立ってる音楽人としての僕らと聴く人をつないでくれるような、その真ん中にあるような曲かなと思います。ねらってそうなってるんじゃなくて、自然と今このタイミングでそういう曲ができてるのは、5周年ライヴのときも言ったけど、一歩前に進むんじゃなくて上に行きたいというのが、自分たちの内側から出てきてるからやと思います。

●リリースの後には、10月に東名阪ツアーが控えています。
AYA:音源を聴いてもらってからツアーに行くのはあんまりないパターンですね。
森 翼:みんな、正解を知ってるということやね。

●「ケサランパサラン」もライヴで育っていきそうですね。
poco:耳ざわりがいい曲だと思うんで、何回かやるうちに対バンのファンの人にもなんとなく知ってる曲みたいになって、僕らが守り続けてきた実家みたいな安心感が生まれると思う。僕らのファンの方たちにとっても、“待ってました”みたいな感じになるといいですよね。ライヴを見に来る行為自体が、温泉に行くのと同じような、そういう気持ちで来れる場所になったらいいな。疲れたからライヴに行こうみたいな。MIMIZUQのライヴに行ったらあの曲をやってくれるから、今月のライヴはいつやったかなってスケジュールを探すみたいな。

●そういうのっていいですね。アーティストが好きでライヴに行くことはもちろんありますけど、音楽とかその曲のためにライヴに行きたくなることもありますもんね。
森 翼:MIMIZUQの音楽が、メンバーとかファン全員が乗れる乗り物にちゃんとなってるんですよね。よく、バンドのことを船にたとえて、“みんなで乗ってなんちゃらで~”とかって言うけど、それだと大きさで乗組員が決まっちゃうじゃないですか。でも音楽やったら、どれだけでも全員乗れるし、どこにでも行けるし。MIMIZUQの音楽は、ちゃんとそういう乗り物になってる感じがするんですね。お客さんもそれを感じてくれるようになってきてると思うし、そういう人たちをもっと増やしたい。今来てくれている人たちに対しても、毎回のライヴでもちろんありがとうって思ってるけど、そういうことを伝えたいシチュエーションで伝えたいとも思う。それはこないだ、初めてファンクラブイベントのBBQをやって、めっちゃ思いました。ステージじゃないところでみんなと時間を共にして、一人ひとりにいつもありがとうって言いたいと思ったけど、一人ひとりに言われへんようなところでその人を発見してそれを言ってあげたいとも思った。やっぱりそれが目標やし、そこへ連れて行ってくれるような大きな曲ができたのは、すごく嬉しいですね。

タイトルとURLをコピーしました