結成から9周年を迎えたThe Benjamin。
良質な楽曲を制作し続けながらも、チャレンジすることを忘れず、
バンドとして成長を重ねてきた9年間だったからだろうか、
いまが最高と三人が口を揃えるインタビューとなった。
結成9周年記念のツアーは、3月24日青山月見ル君想フでファイナルを迎える。
当日券は無料なので、少しでも気になる方はこの機会にぜひ!
9周年を迎える、いまが一番いい
●最新作の『BAT’S EYE』含め、最近はデモシングルという形のリリースが続いていますよね。『Bark in the Garden』で大きく変わった方向性から、またバンドが変化しているように感じているのですが、その点はいかがですか。
ミネムラ“Miney”アキノリ(以下、Miney):一年前に『Beelzebub』というシングルを出したんですけど、そのカップリングの「ボードレールに沈む海」が、意外に評判がよかったんです。ライヴでまったりしそうな曲なんだけど評判がよかったから、そこまで激しくない方向でも自分たちの魅力を出せるかなと思って。去年のデモシングルでも、歌ものというかアレンジの面白さを出した、「ビリオンの星降るシャンデリア」「ベラドンナリリィ、大好きだよ」「ブリキの太鼓」は、どの曲も評判がよかったから。この路線をもっと突き詰めてみたいと思ったんです。
ウスイ“Tacky”タクマ(以下、Tacky):それまでの方向性はアルバム(『BELIEVE』)で完結したから、激しいだけじゃなくて楽しいこともありだよねっていう、中間地点にいるんじゃないかなと思います。
ツブク“Mashoe”マサトシ(以下、Mashoe):去年の9月から毎月違うコンセプトでワンマンをやったんですね。それは、ワンマンごとに推したい曲があったんです。その流れがあったうえでの『BAT’S EYE』なんだと思います。
●あくまでアルバム以降の流れということでしょうか。
Miney:いや、「Bark in the Garden」からの流れとしても一貫してると思います。暴れるための激しい曲ではなくて、カッコいいロック、かっこいいバンドを見せられる音楽をやりたかったわけだから、そんなにズレてないんです。だから、希望を感じましたよね。ただワーッて暴れてそれでOKみたいな盛り上がりじゃなくて、歌とサウンドを合致したものが、ライヴでもまったりするんでじゃなくてサマになることがわかったから。もっとできるんじゃないかっていう希望がありますよね。
●現在9周年のツアー中ですが、それは9年間やってきたからこそ、たどりつけたとか。
Miney:俺個人はね、まだまだ全然です。自分たちとしても伸びしろを求めて活動してるから、表現力とか力量、全てに関してもっとできると思ってるし、もっといっぱいチャレンジしたいですよね。
●ただ、5年目だったらできてなかったとは思うんじゃないですか。
Miney:もちろんもちろん。以前だったら、説得力はもっとなかったかもしんない。
●でも、そういう曲を書くことはできた?
Miney:書けた気がする。でも避けてたな。たぶん5年目だったら、こういう曲はやらない。できる気がしないというか、自分がやろうとしたらちょっと笑っちゃうかもしれない。
●そのあたりどうですか。9年間やってきたから、この曲がやれるみたいな感覚はありますか。
Miney:楽器陣はあんまり関係ないんじゃないかな
Tacky:たぶんヴォーカルが一番大変だと思う。世界を作るのはやっぱりヴォーカルじゃないですか。
●プレイとしてはできても、そのヴォーカルが歌っている隣で弾かなきゃいけないわけですよね。
Tacky:俺は、ヴォーカルに割と引っ張られていくタイプなんで、抵抗なくできますよね。でもそれも、たぶん9年やったからだと思う。
Mashoe:9年やってきて、「Bark in the Garden」からいまみたいな感じになって3年弱ぐらい経って、すごくしっかりヴォーカリストになったなと思ってたんで、全然不安はないですよね。だから、自分がどうプレイするかだけを考えてればいいようになったと思ってます。いまやっているワンマンツアーでも、それが如実に出てるというか、3人それぞれがもう無意識で同じ方向を向いてるという安心感があるし、それでさらに自由度が増してるし。いままでとは違うベクトルを向いててるんじゃないかなって何となく思ってます。
●それは、何かはっきりした違いがある感覚なんですか。
Miney:9周年に向かって、より感じますね。いままでの周年のツアーとかワンマンでもそれぞれあったとは思うんですけど、いまが一番いいんじゃないかなって何となく感じてるんです。バンドとして成熟したものが見えてきたような。ただ、ブログでもちょっと書いたんですけど、アルバムを出したときは、作家的としての俺は打ち止めになるかもしれないって感じてたんですよね。
●でも、それぐらい最高のものが作れたということでは?
Miney:重ねてきた年月を考えると、もしかしたらいままで作ってきたものをなぞって一周していくみたいな、そういう作り方をしちゃうのかなっていう、自分に対する不信感みたいなものを感じて、ちょっとイヤだったんですよ。一周しちゃってもう終わりなんじゃないかなっていうふうに自分では見えたんですよね。でも、去年の夏以降のリリースで4曲作ったことで、もっと新しいものを作りたいんだっていうのがわかったんです。毎月ワンマンをやって、そのたびに新曲を出すのは、自分にとってチャレンジだったんですよね。だから、その4曲で自分にもう一回自信がついたというか。それは自分の個人的なことなんですけど、バンドとしても、曲が台本とか原作だと考えると、アドリブもきくし、基本的なものもすごく上手な二人の俳優がいるんですよね。演じてくれる人と台本はすごくいいものができているし、これは9年積み重ねたものなんです。でも俺に関しては、もっと深めていかなければないっていう気持ちがあります」
●それは、コンポーザーとしての能力と演者としての能力にギャップがあると感じてるということですかね。
Miney:ギャップはありますよね。それに、いい曲を書くことで歌うことのハードルを上げてるからね。
いまが最高、じゃなくて、さらにまだいける
●それぞれに9年間やってきて、変化や成長を実感するところはありますか。The Benjaminとしてだけの9年間以上、一緒にやってきたキャリアがあるわけですけど。
Miney:それに、コロナ禍を挟んでるからね。
Mashoe:途中、3年間なかったような。でも、配信をやるようになって得たものもたくさんありますし、ライヴもリアルタイムで配信することが定番化したし、それはすごくよかったなと思います。どうしてもライヴに来られない方もいらっしゃいますし、ライヴの空気感だけでも一緒に楽しんでもらえたらいいなって思うから。それに、コロナ禍もなく9年間ずっと活動してたら、いまの感じになってたのかなっていうのもちょっと思ったりはするんですよ。コロナ禍に入ってすぐの頃って考える時間がすごく増えたので、ゆっくり考える時間があったことはよかったと思います。
Tacky:9年経ってどうこうとはあんまり感じないんですけど、積み重ねてきたからこそ、いまのライヴの完成度があるなとはもちろん思ってます。最近、ライヴがめちゃめちゃ楽しいんですけど、なんかね、ライヴを始めた頃みたいな初期衝動を感じることがあるんですよ。言葉にするのが難しいんですけど、もっと上手くならなきゃとか思ってた時期があるんですけど、もっとちゃんとこう伝えたいみたいなことを最近すごく感じるんです。積み重ねてきたからこそ、上手くなりたいというのと伝えたいというのが、いいバランスになってるのかなと思います。だから、すごく楽しいし、ワンマンもすごくいい感じだし、これね、もっとよくなる予感がするいい感じなんですよ。なんかね、いまが最高、じゃなくて、
●あ、そうじゃないんだ。
Tacky:じゃなくもないんですけど、
一同:(笑)
Miney:いや、いいこと言ってるよ。
Tacky:すごく最高なんですけど、さらにまだいけるなっていう先が見えてるんです。そういうのをすごく感じてるんで、9年間やってきた中でいまが一番いいですね。個人的にはそういうふうに思ってます。
Miney:Tackyが言ったみたいに、これからよくなるような気がするのは、俺も感じる。
Mashoe:「BAT’S EYE」では、いままでこういうのをやんなかっただろうなっていうアレンジをしたつもりではあるんで、リリースしてライヴでやって、ファンの皆さんからも評判がよかったりするとやっぱり嬉しいし、そういうのがすごくいい感じに転がり続けてるような気がします。自分になかったものを作ってくみて楽しいと、もっとやってみようと思えたりするし、あんまり使ってなかったんですけどエフェクターを入れて、音色変えてみたりっていうのも、去年の夏ぐらいから始めてるし。そういうのが、いいテンションにつながってるのかなと思います。
●そうおうかがいしてると、やっぱりバンドがどういうふうに転がるかってわからないものなんですね。
Miney:全くわからないですね、自分たちのことだけどね。自分たちがどういう表現者になるのか想像してたけど、その通りには全然ならないですよね。その中で、どう楽しむかなのかな。
Mashoe:自分で自分に飽きたくないんですよ。なんかまたこれ弾いてるわみたいに思いたくない。ライヴ中も、既存曲もそうなんですよ。だから、勝手にアレンジ変えちゃったりするし、たぶんみんな勝手にやってるし、それでも形にできてるから、それがまた自信にもなってるんです。それが一番大きいかもしれないですね。
Tacky:ライヴはライヴだったほうがいいですよね。それが一番なんですよね。できなかったことができるようになったというのは、そういうところもあるかもしれない。いままでもちゃんとしたライヴとしてやってきたけど、さらにそれをもっとライヴ感とかスリルとか、そういうのも含めて楽しめるようになってますよね。
●いまがすごくいい感じということは、ツアーファイナルもめっちゃいい感じで迎えられそうですね。
Miney:場所(会場は、青山月見ル君想フ)がいいです。行ったことはないですけど(笑)。
●お月さまが飾ってある会場ですよね。
Miney:そう。今回は、月をテーマにしたライヴになるんですけど、用意しなくてもちゃんとあるから。
Mashoe:しかも結構な大きさの月じゃないですか。
Miney:セットリストも、歌詞の中に月が入っている曲を選びます。9周年記念でもあるので、一年目の曲から幅広くいろんな曲を入れたいですね。
●では、ファイナルに向けて最後に一言ずついただけますか。
Miney:急に形式ばってますね。
一同:(笑)
●最後、ちゃんと締めてみようかなと思ったので(笑)。
Miney:ありきたりなことしか言えないんだよね。
Tacky:かしこまっちゃうんだけど。ここまで散々言ってきましたけれども、僕ら自身もすごくいいし、お客さんの反応もいいし、それは、僕らが可能性が見えてる喜びがテンションの高さにつながってるからだと思うんです。だから、いまの最高を出せればいいし、出せた上で、さらに次が見えたらいいなと思ってます。それをぜひ見に来ていただきたいです。
Mashoe:このインタビューをしていただいてるのが、ツアーを折り返したところなんですけど(取材は3月上旬)、本番が終わって、お客さんが物販を買っているときの声が、ステージの幕越しに聞こえたりするんですね。すごい楽しかったっていう声が、いままでなかったぐらい聞こえてくるんです。9周年を迎えられたのは、応援してくれた方ありきなので、できるだけ感謝を伝えられたらいいなと思いますんで、よかったら遊びに来てください。
Miney:シングルの「バンデット-来世を奪え-」という歌詞の中にもあるんですけど、未来を奪いに行こうというのを合言葉にしてるんですね。9周年ってすごく中途半端で、もしかしたらマンネリ化してしまいそうなんですけど、やっぱり欲張っていかないと楽しめないので、みんな遠慮なく楽しむことを欲張って、どんどん大きな望みを持って、未来の分まで楽しむつもりでライブに来てくれたらいいと思います。