MIMIZUQ 

INTERVIEW

6月に結成5周年を迎えるMIMIZUQが、デジタルシングル「アイラブユーの世界」をリリースした。
愛が詰まった温もりあふれる世界は、それだけに切なくも強くもあり、
聴く者の心をとらえて離さない。
歌やサウンドとともに、そのスケール感を味わえるMVも公開。
4月12日にはデジタルアルバム『時巡りの列車〜Prequel〜』リリース、5月には主催イベント、
6月17日には渋谷PLEASURE PLEASUREで5周年記念ライヴと続く怒涛の活動を前に、
シングルへの思いを森 翼、AYA、seekに訊いた。

曲が生まれたのは、仲間と手をつないで海を漂うある動物のイメージから

●活動予定を発表した「MIMIZUQ Go to 5th Anniversary Project 〜5粒のナミダ〜」には、シングル「アイラブユーの世界」のリリースはなかったですよね。
AYA :新しいアートワークを出すことを一番に考えていたので、音源は考えてなかったんです。でも、MVを出したかったし、MVを出すんやったら音源としても出そうと。それで、アルバムのリード曲という位置づけで「アイラブユーの世界」を選んだんです。

●翼さんは、リード曲とかそういうことを考えて作ったりするタイプじゃないですよね。
森 翼 :アルバムのことは全然考えずに普通に作ったものです。ライヴで歌いたいとかでもなくて、ただ作りたいと思って。
AYA :スタジオで、seekが電話しに行っている間にセッションをしたりするんですけど、森君がいきなり歌い出したんですよ。そこから、みんなでいい感じになったんで、“これ、めっちゃいいやん”って。それが新曲やったんですよね。

seek :でも、翼君が新曲であることを全然説明しないんですよ。俺らからしたら、自分の曲をセッションでやり始めたのか、はたまた声出し代わりにしてるのか、よくわからなかったからスルーしたんです。そしたら、翼君はみんなの食いつきが悪いみたいに思ったらしくて。言ってくれな、わからんって(笑)。ソロでも歌ってたから、やっぱりソロの曲なんやと思ってたら、実はあの曲はMIMIZUQのために書いた曲やったんですけど、みたいな話になって。言ってよ~(笑)。

●翼さんはどういうイメージで曲を作ったんですか。
森 翼:動物が好きなんですけど、ラッコは寝てる間に海で流されないように、海藻を体に巻きつけて寝るんです。じゃあ、海藻がないところで眠くなったらどうするかというと、隣のラッコと手をつないで寝るんです。その話を聞いたときに、“アイラブユーの世界“っていうメロディーと歌詞がうわ~って出てきて。コロナ禍で物理的にも誰かと触れ合ったりできひんかった時期があったし、僕らはファンの人と時代の流れとか渦に飲み込まれそうになったりするけど、この曲があることで出会った人とはぐれないでいられるような、そんな曲になったらいいなと思ったんです。

●手をつないで海に浮かぶラッコのお話から始まったとは想像もつかなかったです。
森 翼:手をつなぐ相手は、友達でも恋人でも家族、親子でも、おじいちゃんと孫でもいいんです。ずっと手をつないでると、最終的にお互いの温度が一緒になるんですよ、それって素敵じゃないですか。手をつなぐって、こんなに温かいことやったんやなと思いました。

●そういうテーマがリード曲にふさわしかったんでしょうか。
seek:スケール感は一番でかいけど、歌詞のワードは身近なものだったりするし、アルバムのリードとしていいかなと。そこに関しては、そんなに話し合いもなく、みんなが同じように感じていた気はしますね。

●“アイラブユーの世界”という言葉自体も、意味を成しているというより、雰囲気で伝わるものがありますよね。
seek:すごくありがちなワード二つなんですよね。でも、二つ並べることで、すごくイメージが広がるんです。

●聴いたときに感じたのは、MIMIZUQというバンドが一歩前へ進んだような感覚だったんですね。それは翼さんらしさが強く出ているところにもあると思うんですが、ご自身としてはどうですか。
森 翼:何て言ったらいいのかな、他の曲やと自分が主人公として歌ってたりするんですけど、この曲は、音楽が一番前にどん! と出ているんです。前進したように感じてもらえたのはそこやと思います。音楽的なことで、いろんな人とつながりたいし、もっと驚かせたいんですね。だから、めっちゃ真面目なことを言うと、歌詞はハッピーな感じになりそうなんだけど、そうしたくなかったから、コードを何十種類も試したんです。

●歌詞どおりにハッピーな感じだと違う?
森 翼:この曲は、綺麗すぎたらあかんと思ったんです。MIMIZUQの綺麗なキラキラPOPにこの歌詞を合わせたら、たぶん僕っぽくないと思うんですよ。だから、着地のところは全部マイナーコードにしました。すごく大きなメロディーの後ろで危うい感じのコード感が続くから、音楽としては綱渡りな感じなんです。でも、メロディーが大きいからいとも容易く飛んでいってるように聞こえる。変なマイナーな悲しいこともいっぱい入れてるけど悲しい曲に聴こえないのは、緻密にバランスを計算して作ってるからなんです。これまでMIMIZUQに持ってきた曲は、自分の感覚で出来上がりにして、みんなでどうにかなりますかねみたいな感じで持っていってたんです。でも、2023年になって、MIMIZUQとしても変わっていくし、自分で新しい挑戦をしたかったんですよね。

●翼さんは、感覚的な、天才型のタイプに見えてるんですけど、そうじゃないところを出しているわけですね。
森 翼:曲を出すときには、その1曲が勝負やと思ってるんです。僕らのことを知らない人たちがまだめちゃくちゃ多いから、その人たちがMIMIZUQの音楽を好きになるためには、音楽でできることはまだまだあると思う。それをやっていきたいんです。

●翼さんが緻密に考えて作ってきたというのは皆さんご存知だったんですか。
seek:初めて聞きました。
AYA:僕も初めて聞きますよ。

●翼さんが持ってきた曲を聴いたときに、コード感に引っかかったりしたとか?
AYA:堀正幸さんがアレンジした後、僕がMIMIZUQ風にアレンジし直したんです。そのとき、全部コードを一度探してみたんですけど、やっぱり森君がつけたコードがよかったんですよね。

●これは新しいヴィジュアルも含めての印象なんですけど、表現の抽象度が増した感じだったんです。歌詞にラッコが出てくるわけでもないですし、具体的な場所や風景を思い描けるわけでもないし
AYA:だからリード曲なのかもしれない。テーマがはっきりしてなくて広いから、アルバム全体のリードかなって。他の曲はやっぱりこれって決まってるテーマがあるから。
森 翼:MIMIZUQの世界をもっと音楽とか楽曲で伝えられたらいいなと思って、自然と広いテーマで書いてたのかもしれない。やっぱりたくさんの人に聴いてほしいんですよ、どんな作品でも。もっと言うと、ライヴは生まれてすぐ死ぬ作品やと思ってるんで、ライヴをやっぱり見に来てほしいんですよね。
seek:楽曲でどうにか表現したいという気持ちは、みんなすごく持ってる気はしますね。

●そういう気持ちになっているところが、アレンジとかプレイに反映したりしているところはありますか。
seek:ヴィジュアルとかメイクについては、バランスをすごく考えたところがあるんですけど、曲はバランスは関係ない気がしてますね。結局、いい曲はいい曲やんってなるというか。ヴィジュアル系のシーンがどうとか見た目のバランスがどうとか、そういうことを関係なくできるパワーがこの曲にはある気がします。例えばですけど、タイアップで深夜にテレビで流れてたときに、見た目が全然わからなくても、“何、この曲?”って思ってもらえる気がする。僕らがバンドをやってるうえで音楽は当たり前にあるものなんですけど、その原点にちょっと戻ってる感じがあるような感じです。曲のパワーみたいなものを楽しんでくださいって。MIMIZUQはヴィジュアルとかコンセプトありきで、楽曲も楽しんでくださいっていうところが強かった気がするんですけど、今はどちらかというと曲に引っ張られてる感じがありますね。

音楽で伝えたいからこそ、ヴィジュアルにもこだわる

●そのヴィジュアルについてですが、これはどういうところから出来上がっていったんでしょうか。
seek:曲とアートワークは連動してるんですよね。この曲だとヴィジュアルはこうだよねっていう、絶妙なバランスの上で成り立ってるように思います。衣装に関しては、曲より早めに決めないといけなかったんで、大きなテーマだけをポンと投げてお任せした感じです。ただ今回は、今までにないパターンで、みんなが比較的揃いの生地とかデザインにしながら、各キャラクターごとに分けようと。
AYA:さらに次のアートワークで大きく変わりたいと思ってるんで、その手前というのを考えました。いきなり変わり過ぎたらあかんかなと思って。もっと先に向かいたいものは決まってるから、そこに向かって一歩を始めたかなっていう印象です。

●確かに。お揃いなのも驚きましたし、黒と赤という色も、チェックというのも驚きました。森から一気に抜け出てきたような気がして。
seek:アイリッシュ系をイメージしたチェックなんですね。それで翼君もスカートをはいてるんです。


●そのヴィジュアルについてですが、これはどういうところから出来上がっていったんでしょうか。
seek:曲とアートワークは連動してるんですよね。この曲だとヴィジュアルはこうだよねっていう、絶妙なバランスの上で成り立ってるように思います。衣装に関しては、曲より早めに決めないといけなかったんで、大きなテーマだけをポンと投げてお任せした感じです。ただ今回は、今までにないパターンで、みんなが比較的揃いの生地とかデザインにしながら、各キャラクターごとに分けようと。
AYA:さらに次のアートワークで大きく変わりたいと思ってるんで、その手前というのを考えました。いきなり変わり過ぎたらあかんかなと思って。もっと先に向かいたいものは決まってるから、そこに向かって一歩を始めたかなっていう印象です。
seek:まだ今回のも発表してないのに(取材時点では)、さらに次の話してる(笑)。

●確かに。お揃いなのも驚きましたし、黒と赤という色も、チェックというのも驚きました。森から一気に抜け出てきたような気がして。
seek:アイリッシュ系をイメージしたチェックなんですね。それで翼君もスカートをはいてるんです

●民族衣装のキルトなんですね。
森 翼:前回と比べると、ヴィジュアル系のシーンを知ってる人からするとちょっとメイクが薄くなったと思うと思うんです。反対に、ヴィジュアル系のシーンをあんまり知らない人からしたら、よりヴィジュアル系の人たちっぽく見えると思うし、面白いですよね。
seek:ヴィジュアル系シーンで育った俺たちと、J-⁠POPのシーンで育ってきた翼君とpocoさんと、今のMIMIZUQとしての落としどころについては話した気はします。俺からしたらすごくメイクを落としたと思っているんですね。それはAYA君からの提案だったんですけど、どれぐらいの加減で落とすか、メイクさんとも撮影当日メイクしながら話したんです。メイクを落としたとしても、俺は育ちがヴィジュアル系やから絶対ヴィジュアル系と思われると思うんですよ。pocoさんは逆やと思うんですよね。いくらメイクを濃くしてもどこかヴィジュアル系じゃないにおいがしてるから。そこが今のMIMIZUQは歪でもあるんですけど、可能性でもあると思ってます。


●AYAさんが、seekさんのメイクを薄くしたいと思ったのはどうしてなんですか。
AYA:僕とseekはやっぱりヴィジュアル畑にいるから、そのイメージだけが強くなりがちなんですけど、そうじゃなくて、均等にしたいとは考えてますね。
seek:バンドのトータルのイメージを考えると、僕がメイクを落とすのが一番メイクが落ちたように感じられると思うんです。
AYA:それで、逆にpocoさんはメイクしてくださいって言って。一度その辺りをゴチャッとさせたかったんです。別にヴィジュアル系を離れるとかでもないし、いいところを取りたいんですよね。
森 翼:だから、ヴィジュアル系とJ-POPの真ん中に寄った感じですよね、俺とpocoさんはヴィジュアル系に寄ったイメージで。ヴィジュアル系の人から見たら別に普通やぞって言われても、俺らが育ってきた畑からしたら、これが戦闘服かって思うんですよ。seekさんとAYAさんは、僕らがやってるほうに集まってるから、みんなが内に一歩ずつ入ってきた感じなんです。ちょっとseekさんが大股かな。

AYA:最近ライヴもね、森くんとかの方のイベントにも呼んでもらったりして、活動範囲がもっと広がってるから。そういう準備をしていかなあかんのかなと。
森 翼:MVを撮ってるときに、衣装と曲がめっちゃ合ってる気がしましたね。
seek:撮影場所もだし、曲のスケール感もデカいから。あの世界観の中で、誰かがイメージシーンから撮影してる風景を離れたとこから見てたら、この景色にこの音楽がぴったりやなって。森 翼:AYAさんが、砂丘で撮りたいと言ったんですけど、砂丘ってめっちゃ寒いんですよ。引きでシルエットだけ撮るときやったんですけど、シルエットだけやのに、“AYAさん、すみません。寒そうです”って言われました(笑)。

●シルエットだけでも伝わるぐらい。
AYA:これまでの人生を振り返っても、数えられるほどの過酷なロケでした。
seek:俺らは休憩いただいたからいいですけど、スタッフチームはもう昼飯すら食わずに、朝9時半に集合してから日暮れの6時半までぶっ通しでしたね。
AYA:日が沈むまでが勝負やったから。

●だだっ広いところとか何もないところみたいなのがイメージとしてあったってことですね。
AYA:メンバーで飲んでたときにMVの話になって、広いところで撮りたいねみたいな話をしたのを覚えています。そこから、監督さんが砂丘のある場所を教えてくれたんです。
seek:とにかくスケールがでかいところでやりたいって言ってましたね。
AYA:まだ仕上がりを見てないですけど、たぶんめちゃくちゃいいと思います。
森 翼:曲のスケールが大きい分、みんなでもっとこうしようって話したりして曲が完成して。そしたら視覚的にももっとイメージが膨らんでほしいから、MVはこうしたいねって話が出て。さらに、実際に撮影したらまた曲が大きくなって。視覚的要素を加えることで曲のイメージがこんなに膨らむんだというのはわかってるつもりやったけど、すごくそれを体現できましたね。きっとステージでも動作ひとつとっても広がる宇宙の幅が違うんやろうと思うから、AYAさんとseekさんがヴィジュアル系のシーンっで培ってきたものなんだなって思います。

●音楽だけでなく、視覚的にもこだわっているのはMIMIZUQの大きな魅力ですもんね。
森 翼:素直に今回の一連の作品作りですごく勉強になったとこですね。アフリカのことわざに、早く行きたいんやったら一人で行ってこい、遠くに行きたいんやったらみんなで行けっていうことわざがあるんです。手をつなぐラッコの話もそうですけど、最近そういうぐっとくる感じを受けることがよくあるんです。この先もこの曲が大事になるんやろうなと思うし、みんなの前で歌うのがすごく楽しみですね。
AYA:新しいアートワークが解禁になって、これからすごく加速しそうな気がしてます。去年よりもめちゃくちゃ楽しみ。ファンの人がどういうリアクションをしてくれるか、新しく出会う人からは違うリアクションが出てくるんじゃないかって期待してるんです。
seek:メンバーが去年より前のめりになってるのは感じてます。今まではどちらかというと、AYA君がこんなことをやろうと、わかりやすいコンセプトを出して、それに対してアイデアを出すような形で進めてたんですけど、今は、それよりもこっちの方がよくないですかって、意見のぶつかり合いみたいなものが増えてきてるんです。それぐらい意見が出てくるし、ある意味、バンドらしくなってきたと思いますね。

タイトルとURLをコピーしました