MIMIZUQ

INTERVIEW

デジタルアルバム『時巡りの列車〜Prequel〜』をリリースしたMIMIZUQ。
アプレゲールでは、発売日前日、4月11日にNAKED LOFT YOKOHAMAでの試聴会で
公開インタビューを敢行した。
ファンの皆さんの前で直接届けられた声を、ここに公開します。
会場に足を運んだ方もそうでない方も、これを読んでさらにアルバムを深く楽しんでください。

●まずは、アルバムの選曲についてからおうかがいしたいんですが、すでに音源になっている5曲以外に関して、どんな風に収録曲は選んだんですか。
AYA:考えたのは、僕ですね。
seek:ライヴでしか演奏してない曲とか、逆にライヴでまだやってない過去の曲とか、全体を見越した上で考えて、その采配はAYA君がやってくれました。
AYA:“時巡りの列車”には人の人生を重ね合わせてるんで、生まれてから年齢を重ねていくのに合わせて曲順はある程度決まってたんですよね。その間をいかに上手く埋めていくかを考えました。
seek:時巡りの列車はこれで終わるんかなと思ってたんですよ。そろそろ終着駅に向かってるんだと思ってたら、サブタイトルが前編という意味で。まだあるんや、みたいな(笑)。
AYA:みんながいっぱい曲を書いてくるから、アルバム1枚には収まり切らないと思って、2枚に分けることにしたんです。だから、このアルバムは人生でいうとまだまだ若者の頃ですよね。
poco:「アイラブユーの世界」は、年をとって死ぬ人の歌じゃないんですよね。まだ人生半ばの一番イキイキしてるときですね。
AYA:「涙の成分」は前からあった曲なんでコンセプトには関係ないんですけど、主人公の世代にぴったりハマるかなと思ったんで入れました。盛り上がれる曲だと「ハイレフルラリレホー」もあったんですけど、「走れ!走れ!走れ!」のほうが青春っぽいというか若者っぽいというか。「ハイレフルラリレホー」は後編に入るんでしょうね。
seek:まだ前編も出てへんのに、後編の話をするなって(笑)。

●翼さんは選曲についてはいかがですか。
森 翼:AYAさんが選曲してくれたのを1曲目から並べて聴くと、やっぱりいいですね。最近は曲順を意識して聴く機会が減ったじゃないですか。AYAさんがこういう風に考えて選んで並べてっていう話を聞いた上でまた聴いてもらえると、僕らの世界観をもっと深く感じてもらえるのかなと思います。

●確かに並べて聴くとより感じられることがありますよね。列車が走り始めるのに重ね合わせて主人公が成長していく流れと、バンドがこの4人になってまたスタートして成長していくところがすごく重なっていると改めて感じたんですけど、それはコンセプトを考えたときから既にイメージしていたことなんですか。
AYA:ライヴは“プラットフォームにて”から始まってるし、曲は「孵化」から始まってるし、だんだん大人になっていくさまをツアータイトルにずっとつけてたし。それが確かに自分たちと重なるかも、ってやってみて思いました。

●意識して作ったというより、後から思った?
AYA:あんまり考えてなかったかもしれないですね。コンセプトはあくまでコンセプトとして考えてたから。自然と僕らも列車についていってるんじゃないですかね。
poco:こうやって流れで聴いてみたら、どういうシーンにも寄り添えるというか、いろんな人が経験していることに重ねやすそうというか、そういう感じがします。自分を投影しやすい曲が揃ったんじゃないかなと思いますね。柔らかいというか丸いというか、そういう質感になりました。
seek:翼君が加入してから、楽曲的にチャレンジしてる気分ではあったんですけど、いざ10曲並べて聴くと、すごくポップスのアルバムだなって思いました。今までは、アルバムではできることを広げる作業をやってたつもりやったんですけど、意外とやりたいことがはっきり出た作品になったかな。

●それは、プロデューサー・AYAとしてはねらい通り?
AYA:僕はねらってましたよ。
seek:ほんまか?
AYA:僕の中で絶対ひとつ決めてたことがあるんです。「孵化」を作ったときかな、pocoさんがツイートで「透明感のあるサウンドができました」みたいなのを呟いてて。それを見て、俺が今やりたいことなんかもと思ったんです。だから、この1枚は透明感を意識して作りました。ギターとかシンセの音も透明感を感じるような、森君の声に合わせるような感じで作ったし。そこから成長してきて、「走れ!走れ!走れ!」で、やっと強さみたいなのが出てきてるんです。

森 翼自らの解釈で新たな命が吹き込まれた「涙の成分」

●では、収録曲についておうかがいしていきましょう。このアルバムで初めて音源化されたものを中心におうかがいしていきたいので、まず4曲目の「NAMIDA MUSIC FACTORY」。これはコロナ禍で、3人だけで、そんな状態でファンの方と一緒に作った曲ですよね。
seek:コロナ禍で、ヴォーカル不在の状態で、このバンドどうなんの?って、みんなが思ってた状況やったから、まず新曲を作ることが一番大きな意味がある気がしてたんですね。雑な言い方をしちゃうと、新曲を作ることで、バンドを続けていく気があるんやぐらいに思わせたいと思ったんです。それで、新曲を作る企画をやりたいと思って、さらに作る過程をみんなに見てもらえたらいいかなって。それから翼君が入って、翼君の声が乗ったときはすごく嬉しかったです。
森 翼:自分がMIMIZUQのライヴを見に行ったときにはボカロでやってたし、阿佐ヶ谷でみんなと一緒に作ってる配信も見てたし。自分的にも歌う前から思い入れがあった曲ですね。
AYA:こないだね、ライヴでお客さんの声も一緒になって、本当に完成したと思いました。

●「涙の成分」は、この体制になる前からある曲です。
poco:Bメロは、スティングの「Englishman in NewYork」みたいな感じですよね。そういう大人っぽいことができるようになりましたよね。あとは、翼君のこの曲に対しての解釈というか没入が素晴らしいんです。自分の中から解釈をひねり出してるのを歌から感じるので、演奏でもそうしたいと思ってます。

●翼さんとしては、どんな風に歌おうと考えたんですか。
森 翼:本当にpocoさんが言ったみたいに、超個人的解釈で精一杯歌ってます。それが一番伝わるのかなと思ったんですよね。ステージで初めてそう思えた曲でもあります。

●個人的な解釈でいいんだと?
森 翼:自分の解釈がこのメンバーとリンクしてるという自信が生まれたんですよね。だから大きな声で歌えるようになりましたね。
poco:バンドやな。
seek:翼君は、声を小さくしたり大きくしたり、早く行ったりゆっくり行ったり、会場全体ひっくるめてコントロールするんです。それが初めは、メンバーとしてまだ距離感がわからなかったから怖かったりもして。思っていた以上に、翼君のライヴの作り方はバケモノやから。俺らは長くステージに立って、歪なものを箱の中に閉じ込める作業が多いんです。パッケージしたものを見せようとしがちでも、ライヴを重ねて、翼君に委ねていいんだとわかりました。そういうところが、「涙の成分」は特に多いかなと思います。だから、演奏中は一切翼君の方は見ない。まっすぐお客さんのことを見てれば、翼君がこの空間を支配してくれるだろうと感じながらやってます。
AYA:最近のライヴで一番やってるんじゃないかな。イベントライヴでは絶対入れるようにしてます。

●それはMIMIZUQらしさが出ているから?
AYA:そうですね、MIMIZUQの一番強いところだと思います。
seek:エンターテインメントとしても、AYA君が紙をめくってますけど、あれって何なん?じゃないですか。リハーサルのときは、照明さんに「上手にこういうものを置かせていただきます。これを今からめくるという演出を上手のウサギの人がやります。それが見える程度の明かりをつけていただきたいです」って説明してやるんですけど、スタッフさんも何してるんやろ?って思ってるやろなと思いつつ。

●もう見慣れているから、不思議に思わなくなってますけど、確かにそうですね。
seek:僕らが持ってる視覚的な強みでもあり、楽曲的な強みでもあり。この曲は、初めて見る人にはインパクトがあるかなと思いますね。
森 翼:普段いろんなバンドさんを見ていて、リレー形式ができているバンドさんがすごいと思うんです。例えば、イントロから始まって、次にヴォーカルがバトンをもらって第2走者になって、次にギターソロの人に渡して第3走者になって、みたいな。そういうリレーが上手くいバンドを見るとすごいと思うんですけど、「涙の成分」は、僕らMIMIZUQが1個の球体の上を全員が違うところからせーので4方向に走ってる感じなんです。メンバーは隣におらんねんけど、一緒に走ってるとみんなが信じ切ってるし、球体の裏で毎回ちゃんと集合できるんです。それを多分みんなはグルーヴという言葉で呼んでるのかなって思います。

“好きだけど壊した“ この一行に込められたもの

●その次が「忘縁峡」ですが、ここがこのアルバムの切なさのピークというか、一番ぐっとくるところですよね。この作詞は翼さんとAYAさんの共作だそうですね。
森 翼:初めに、“好きだけど、壊した”っていう1行に、AYAさんがフィットしてくれたんです。
seek:翼君とAYA君のサイコパスな部分が共鳴した曲です。歌詞をフルで見たとき、引いたもん。
AYA:アコギの弾き語りで森君から原曲が送られてきたんすよ。サビに、“好きだけど壊した”という言葉があって、そのインパクトがあまりに強くて、形にしたいと思いました。その頃に、遠い星の光は、その何万年前の光を見ているわけやから、もうその星はなくなってるかもしれないみたいな話をテレビで見たんですね。時間を超えた七夕の、遠距離恋愛の歌にしようと思って、前から温めててたんです。遠い星を見て、もういないかも知れなよねっていう恋愛の歌です。

●そんなロマンチックで切ない歌なのに、壊しちゃうんですか。
AYA:そういうのを、森君と俺の中では“メル変換”って呼んでます。メルヘンに変換してくださいっていう意味で、森君が書いてきたのをメル変換するんです。
seek:翼君が歌詞に使ってるワードは日常的なワードも多かったりするから。生々しい世界観をファンタジーの方向に持っていってほしいみたいなのが、メル変換っていう新しい言葉になったんや。
poco:“メル変換”できる人は日本でも限られてるから、ココナラとかで売れると思います。
AYA:おまかせあれ。

●楽曲はどんなふうに作っていったんですか。
AYA:初めに聴いたときにシングルじゃないと思って、アルバムで遊べるなと。だからあえて、あれだけサビが長いんですよ。“好きだから壊した”っていうところがすごく長い。あそこは音楽的に言うと、僕とseekがずっと違うことを演奏して、場面を変えていくんです。
seek:だから、めっちゃややこしい。どこ弾いてんの?ってなるから、MIMIZUQで1番嫌いな曲です。翼君の歌がこのテンションのときはこのコード、このときはドラムのリズムがハーフになって、みたいに翼君の声で覚えてるんですけど、翼君のテンションに引っ張られたりして。ライヴだと違う感じの歌になるから、覚えていたのと違かった〜ってなるときがある。
AYA:今回のレコーディングでも、“好きだけど壊した”っていうところは、そのときの感情で何回もやってもらったから、さらにややこしくなったな。
seek:マジで歌録りのとき、これはヤバいって思った。今、(試聴会で)聴いたところだけで騙されたらあかんで、綺麗な曲やって思ったかもしらんけど。今聴いたところの男子のときは、まだいい彼氏やねん。でも、この後ヤバなんねん。みんな騙されんなよ、あんな彼氏と付き合ったらあかんから。
AYA:本性あれやからって。
seek:一緒に住んだらあかんねん、っていう曲です。
観客:(笑)

●曲の印象が変わってきたんですけど(苦笑)。
seek:酒飲みながらこの話したらあかんな。
poco:表現力の賜物ですね。

いつかはレコーディング配信もあり?

●9曲目の「走れ!走れ!走れ!」はseekさんの曲で、全体的にポップな印象の曲が多かった中でいうと、ちょっと激しい感じですよね。
AYA:この曲だけ使ってるギターも違います。「孵化」のギターでいくのか、このちょっとメロコアふうにするのかは結構迷いました。結果、力強さみたいなのを求めていつもと違うギターを使ったんで、いつもと違うMIMIZUQな感じが出てるんじゃないかなと思います。

●そういう曲も入れたいという考えがあったんですか。
AYA:コンセプトである人生の時系列で言うと、若さみたいなのを印象付けるにはもってこいの曲なのかな。

●テンポも速いですもんね。
森 翼:ドラムのレコーディングが長引くんちゃうかなと思ってたら、一番この曲が早く終わったんで、すごいなって思いました。OKテイク連発で、このテイクの中のいいやつを使ってくださいみたいな感じなんです。
seek:これが日本のプロドラマーの上から数えて両手の指に入る人のプレイなんだなって思います。
観客:拍手
poco:いや、指200本ぐらいあったでしょ(照笑)。スタジオを使える時間は貴重なんで、短縮したいんです。俺が早く終われば他のことに時間を使えるから。目的の音を作るのもそうやし、プレイについても録ってる間に直すところがわかるから、2回目にはもうわかってる。
seek:僕とAYAさんは正座していつもスタジオで聴いてます。全然足しびれへんもんな、すぐ終わるから。
森 翼:今度、レコーディング配信するわ。 
観客:歓声
seek:後編の何かの曲でやりましょうか?
poco:面白いっすね。ちなみに翼君も、やっと飯食えると思ってコンビニに行って帰ってきたら、1本録れてるんです。嘘でしょっていうぐらいの速さですよ。だから何かね、追いかけっこしてますね。

●レコーディングの話になったのでちょっとおうかがいしたいんですけど、特に翼さんの歌に関しては、加入されて間もない頃の曲と、最近撮った曲だと、より自分らしさを出せているというか、変化している印象があったんですけど、いかがですか。
seek:そうやね。俺が言うことじゃないかもやけど、始めたときの方がめちゃくちゃtoo much丁寧というかね、繊細にやってくれてた気がします。今の方が生き生きというか、抑揚が確かにしますね。どうなんですか、その辺は。
森 翼:そうですね、やっぱり信頼感ですよね。加入した当初からはどんどん信頼感が高まっていってるから、フルスイングで歌えるようになりました。さっきの話でいうリレー理論とも近くて、レコーディングでも、ここは誰の持ち場やなって信頼できるというか。だから、すごくバンドになってきてるし、この音源はライヴ感がありますよね。聴いたら、ライヴに行きたくなってくれるんじゃないかなって思う。

●そろそろ締めくくりに入りますが、公開インタビューはいかがでしたか。
seek:俺、人前で音楽の話をするのは苦手やな、嫌やなと思ってきた音楽人生でしたけど、こういう時間って大切ですね。公開でインタビューすると違いますね。
AYA:何か違います、いつもと。
seek:AYA君がトークイベントでこんなに喋ることってないし、今日は違う表情が出てる気がするから、いい機会ですね、こういうのは。

●おうかがいしても新鮮な感じがしたのでよかったです。では、最後に皆さんから一言ずついただいて、終わりにしましょう。
AYA:森君が入ってからもうすぐ2年ですけど、頑張って作ってきた曲が形になって、やっとみんなのもとに届いたのがすごく感慨深かったです。こんな経験をさせていただいてありがとうございます。
poco:「アイラブユーの世界」のMV撮影のワンシーンでね、丘の上で、4匹というか4人が集まってね、旗を持つシーンあるんですけど、そういう旗印みたいなものをこの4人で作れたのがとても嬉しいです。今日聴いてみて、そうだよねっていう確信があったし、それが次への糧にもなりますし。これまで何十回何百回聴いてきたんですけど、皆さんにもそれと同じぐらい愛していただけたらいいなと思いました。
seek:音楽を作るという意味ですごいプロフェッショナルの人たちが集まって作った作品だと思うんですけど、実際やってることはすごくがむしゃらな感じがしてて。音楽を長くやってきた4人が、ドキドキワクワクしながら作った音楽をみんなが共有してくれて、良かったね、ヤッタねって思うけど、俺はまだこれからな気がしてます。自分らが作った音楽をもっとたくさんの人に聴いてほしいし、みんなが応援しててよかったなって思えるバンドになりたい。こんなことをやってるバンドなんですっていう作品が作れたから、ここからもっともっとチャレンジしていけたらと思ってます。ありがとうございます。
森 翼:いいアルバムができたと自信を持って言える作品。今僕はタイにいるんですけど、タイでは自分の名前以外に、みんなニックネームを持ってるんですよ。本名は知らんけどニックネームは知ってるみたいなことがざらにあって。僕は、MIMIZUQからのミミって呼ばれてるんです。動物の3人は税関とか通過するのがきついと思うから、人間である僕がいろんなところに行ってMIMIZUQを広めているので、安心して待っててください。
会場:(笑)

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