いよいよWaiveのラストツアー『LAST GIGS.』のスタートが近づいてきた。
記念すべき第二十回では、
おそらくWaive最後の曲になるであろう新曲について、その複雑な心情を訊いた。
残されたときを惜しむように、そして受け取れる新しい魅力を楽しみながら、
ぜひツアーに足を運んでほしい。
最後だから、最後の曲ではなく、日常から生まれた曲を

●『蒼紅一線』ツアーが終わって、間もなく1ヶ月です(取材は8月20日)。この間は、曲づくりを?
「最初の2週間ぐらいは休んでたというか、いろんなことをしてたし、作曲していたというかは難しいんですけど。曲を作る上で、Waiveとかソロワークとかの、ようは自分が演じる側の曲を作るときだけは他と違った悩みみたいなものがあるので、僕の中ではそういった時間も作曲かもしれなくて。楽曲提供のときは考える猶予がなかったり、そもそも方向性が決められていることが多いので、ジャンル感とか世界観のチョイスで悩むことはないんです」
●お題があるから。
「でも、自分たちの作品だと、バラードなのか何なのかみたいなことさえ選べちゃうじゃないですか。 まあ、状況も状況だから最後の曲になるだろうなとかって考えたり。そういう邪念みたいなものが入ってきてしまって、ピュアに最初に思っていたものを、よし行こうってなりにくい瞬間があるというか」
●ピュアというか、衝動的なものがあった上に、邪念が入ってくるみたいな?
「そうそう。ジャーンとギターを弾き始めて、それに対して鼻歌を歌ったら、ちょっとメロウなものが出て来て、仮にもともとはオラオラ煽りたいぜと思ってたとしたら、いや? やっぱりこっちか?ってなったりとか。まあ、逆もしかりだし。だから、机上の空論だったものが形になっていくとボツになるというのはいっぱいあるんですよね」
●それは音楽的な話かと思うんですけど、Waive最後の曲であるという意識がもっと大きくのしかかったりはしていないんですか。
「きっとそうなんですけど、そうだとイヤだと思ってしまう瞬間があるというか。要は、最後だから最後の曲を書いてしまうのはすごく寂しいから、最後こそいたって日常で生まれた曲でありたいんです。つまりそれは、最後だからと思っちゃっているということですけど。これを繰り返してる気がする。気張った曲を書いてしまうと気張った曲になっちゃうんです。で、自分で聴くたびに、気張っとんな、って思っちゃう。そうはなりたくない。気張らずとも勝手にエモいものが生まれるターンもあると思うんです。たとえば「HEART.」は、解散でなかったら生まれてない曲だと思う。曲というか歌詞かな。ああいうものは、当時のシチュエーションが自分をあそこに連れて行ってくれたから、自分的にはナチュラルに生まれている。そういうことが起きることはあると思うんですけど、そこには引っ張りたくないんです」
●シチュエーションによって自然にそうなるんだったらいいけれど、ということですよね。
「そういうシチュエーションだということを頭で考えてしまった段階で、そうではないから。「HEART.」のときはたぶん頭で考えてないんですよ。シチュエーションが勝手にそれを生ましてしまったから」
●それは、前の解散は自分で選び取ったわけじゃないからですよね。
「そうそう、そうですね」
●今回は自分で選んでいるから、シチュエーションに持って行ってもらうんじゃない。
「僕が必要としているのは、僕が満足する曲を書くことなんです。出す前にボツにするかどうか、自分に選択権があるから。自分がどういう曲だったら出してもいいと思える水準の曲になるか、ただ試行錯誤を繰り返すしかない」

●最後の曲はこうあってほしいみたいな意識もないんですね。
「うん、ないです。自分がこれだと思ったものが最後の曲であるべきだと思ってる。あとはちょっと、複雑な言い方かもしれないですけど、これが最後じゃないかもと思いながら書きたい。そのモードに自分を洗脳するのに時間がかかっちゃう気がする。どうしても、これが最後の曲やっていうメロディを作っちゃうんですよ」
●恣意的なものが入ってくる?
「それもそうだし、衝動みたいなものからバーンって生まれるものとしては、あのときほどお前エモくないやろうって自分で思っちゃうんですよ。その方向性では、「HEART.」とか「Days.」に勝てない。あとは単純に考えても、セットリストを組む際に、それはもう溢れるほどあるでしょという曲はいらないと思うから」
●となると、書ける曲が絞られてしまいません?
「僕はそう思ってる。もしファンの人に最後にどんな曲が欲しいですか? って聞いたら、漠然とだけどエモいものを求める答えが多くなるじゃないですか」
●やっぱり浸りたいのかな。
「それが普通なんだと思うんですよ。この感情を曲にしてほしい、ということだと思うんです。それって僕は正しい答えのひとつだと思うけれど、もしもバンドが続いていくなら、その曲が本当に欲しいわけじゃなくなりますよね。解散というシチュエーションがあるから、欲しくなっているだけでしかない。だから、バンドが続いていく中で純粋に生まれるべきものを生んだほうがよくない?って思ってるんです。変な考え方だし、歪んでるなぁと思われるかもしれないけど、解散するからこそ、もっとこの続きを見たかったと思える曲を生むのがこのターンなんちゃうかと思ってるんですよ。なぜなら、Waiveは終わりに向けた曲をすでに生んでいるから」
2026年の解散には、絶望だけではなく、希望があってほしい

●武道館でどうやるかっていうのを考えると、確かにわかるような。
「武道館じゃなくても、ラストシングルだとしてもそう。ここで、もっと聴きたいと思わせることこそが最適解であって、私たちが言葉に表せられなかった感情を埋めてくれた、みたいなことは、音楽がやるべきことじゃないんじゃないのかな。欲しい言葉はあると思うんですよ。でも、欲しい音はないと思う。音とか曲調で言葉は引っ張られてしまうから、どんな言葉でも選択できる余地がある手前の作曲の段階でエモいものを意識してしまうと、生まれてくる歌詞の言葉まで縛っちゃうだけだから。本当に純粋に僕たちがやりたい曲、仮にこの先にライヴが何十本とあったとしても、セットリストに入ってくるような曲をつくるべきじゃないのかなって思うんですよ。『蒼紅一閃』ツアーをやって、すごくそう思った。『蒼紅一閃』はベストアルバム2枚から選ばれているからこそ、そこに入り込める曲であるべきだよなと」
●そこにプラスされるにふさわしい新曲を書くわけですよね。
「そう。それは、すでにある曲をはじくべきものではない。入れ替えていくんだとしても、少なくとも「HEART.」とか「いつか」の代わりではなくない?って思っちゃうんです。終わりとか感情のピークみたいなものを打ち破って出てくるものは、もうWaiveには球数がありすぎる気がする」
●なるほど。
「再録ツアーをやったことで、すでにその方向性の最高傑作を人生で生んでしまっていると感じた。どれだけ技術を磨こうが経験を重ねようが、この方向性で突破することは誰にもできないと思う」
●だから、最後の曲でもその方向性には向かわないんですね。
「それに、解散をエモくして、バンドがなくなることを一緒に悲しもうぜとか、一緒に悲しんでくれる人がひとりでも多ければ自分が報われるかもみたいな気持ちもない。「HEART.」とか「Sad.」をつくったときみたいに、俺の気持ちをわかってくれ、みたいなことをいまは思っていないから。僕の痛みは僕が自分で知っているし、自分で受け止められるぐらい、年齢を重ねたというか、そうなった気がするから。痛みを理解してくれる人がいることは、めちゃくちゃ嬉しいけど、理解してくれない人に恨み節は言いたくない。2005年に解散したときは、自分が正義だと思ってもらいたかった。やめるって言ってる奴が悪くて、続けたいって言ってる奴が正しい、だってそうでしょう、って言ってた気がするんですよ。でもいまとなっては、そう思わない。みんな自分のことに必死だったから、それぞれみんな正しいし、みんな悪でしょうと思ってるから」
●そうなると、悲しみとか怒りを前面に押し出したものにはならないと。
「すごくナチュラルに、この先もあるんじゃないんだろうかって思いながら終わりたいなぁと思ってる。最後だということは揺るがないから、曖昧なことをやりたいわけじゃないけど。どこかしらの意味では続けることができたのにな、でも終わらせるんだねっていうものでありたい。2005年の解散ライヴは、これは続かんなっていうものだったと思うんですよ。でも今回は、この部分には希望が描けるよねって思えるものでありたい。2005年は絶望が大前提としてあったから光を探してしまってたけど、今回のプロジェクトでは、この先やることがなかろうが、光はここにあるよね、何かが残っているよねっていう状態で終わらせたい。そこに絶望を生みたくないんです。なんか難しいですけどね、望みがあると思わせたいわけではないし」
●何に対する希望なのか、ということでしょうか。
「7月25日のLIQUID ROOMでも話しましたけど、従うべきものと抗うべきものの区別をちゃんとつけながら生きないとダメだと思っているんです。時間が過ぎることは抗いようがない事実だから従うべきだけど、年老いることに対しては少しは抗がうこともできる、みたいなことですよね。我々は自然に歳をとっていくし、Waiveは1月4日に解散するし、その中でどういうことをやって、どう受け入れて、どうするんだということを考えて、生きていくしかないんだろうな。その上で、やっぱり終わりを意識してしまうけど、自分であったり、メンバーそれぞれ、ファンそれぞれとか、その人生みたいなこととか、もっとムチャクチャなことを言うと地球とか、そういうものは続いていくから、すべて絶望だと思ってしまうような生き方はすごくよくなくて。僕と同じような感情になってくれる人がひとりでもいると嬉しいけど、同時に、その感情の中にはこういう喜びもあるよねとか、そういうことを考えながら未来をつくっていく決心なんだよねとか、そういうことを理解し合いたいし、感じ合いたい。僕は、2005年の解散を経験して、バンドを終わらせるということが何なのか改めて考えたし、これから無限に解散していくだろうバンドの誰かにとって、2026年の解散で、解散の仕方としての光みたいなものが残ったらいいなと思う。それはべつにバンドに限らないじゃないですか。人によって違う何かに置き換えて、こういう生き方もあるんだ、こういう考え方もあるんだと思ってくれたらいいと思っているんです。それをすごく思うな」

ラストツアー『LAST GIGS.』初日に新ヴィジュアル解禁! そして新曲も…?

●新曲を想像するのがかなり難しいです。
「誤解を生んでしまいそうな言い方だけど、Waiveらしくないように思われる曲をやっていくほうがいいと思っちゃってる。「火花」だって、いまとなってはWaiveの曲っぽくなってるけど、出したときはそう思わなかった人も多いだろうし。「アルティメットミラクルジャンプ」のときもそうで、勝負を仕掛けるために安パイじゃないものを書いているんですよ。僕は格闘技理論を信じてるから、殴られるかもしれないところまで踏み込まないと、自分のパンチは絶対当たらないと思ってる」
●でもそこでこそ、最後だから引き分けに持ち込むとか。
「ああ、それはない。それはない。勝ちたい」
●最後だから日和っちゃうみたいなこともなく? すごく悪く言うと、置きに行くとか。置きに行くとも思えないですけど。
「いや、わかりますよ。でも、置きに行った奴は、判定で負けるんですね。格闘技は絶対にそう。絶対に踏み込んだ奴が勝つし、もし勝てなかったとしても、踏み込まなかった後悔は拭いされない。自分に納得をいかせたいプロジェクトなんだから、ここで引くことはない。引くべきシチュエーションもこの世にいっぱいあるのもわかる。ここはドローを選んどいたらいい、踏み込んで怪我してどうすんの? みたいなときも世の中にはあると思う。でも、そもそもそんなことを言ったら、武道館やらんほうがええやんってなる(笑)」
●確かに(苦笑)。愚問でした。
「ここは、絶対に踏み込むべき。どういう戦いの場なのかは決まっちゃってる気がする」
●作曲の進捗としては、どういう状況なんですか。
「1曲書き終わって、メンバーにも渡していて、これから歌詞を書きます。メロディは、歌詞の文字数とかでちょっと変わると思うんですけど、概ねはできていて。まあ、ん~っていう感じですね。僕は満足してるんですけど、ファンには予想外すぎて、どうした? これ、最後でいいんか?ってなるでしょうねって思っています」
●メンバーさんからは何かありましたか。
「最後の曲であるということに対しては、何も。僕だったら、ビックリした、予想外やったぐらいは言っちゃうと思いますけど」
●ファンの多くも予想外と捉えるだろうっていう感じ?
「そう思います」
●逆に楽しみというか、何というか。
「めちゃくちゃ変な曲とかじゃないですよ。一応言っておくと「ペーパードレスレディ」とか、そういう方向のものでもない。とにかく、予想はしてないと思います」
●その曲は、9月からのラストツアー『LAST GIGS.』で聴けたりするんですか。
「やりたいと思って作り進めていますが、正直なところ、いまの段階では完成が間に合うかわかんないな。でも、やれたほうがいいだろうな」
●そこも含めて、ツアーのセットリストはこれから考えるということですよね。
「そうですね。あんまり考えてる時間がないと思うんだけど、ほかにやることが多すぎて。曲のこともそうだけど、歌詞も書かなきゃダメだし、グッズのデザインとかもあるし」

●ちなみに、新しいアー写は?
「ツアー初日のBIG CATの前日が撮影ですよ。おかしいでしょ、このスケジュール(苦笑)」
●ええ?? そうなると、ツアー初日が衣装のお披露目ということですか。
「そうですね。僕らより後輩の世代だったら、きっとそれを発表したりしますよね、次のライヴは新衣装ですとかって。あれ、何なんでしょうね(苦笑)」
●いやいや、初日の楽しみが増えました。