25周年記念のこの企画のトリを飾るのは、もちろんヴォーカルDAISHI。
Psycho le Cému結成の立役者である彼の目に映る5人の姿とは。
5月3日、神田明神ホールでのライヴ『Galaxy’s 伏魔殿~銀河を駆け抜けろ~』を目前に控え、
バンド人生を楽しみながら、早くも30周年を見据える眼差しは、
結成当初とは異なるかもしれないが、まだまだ意欲に満ちていた。
●Psycho le Cémuの結成にあたってはねらいがあって、それを踏まえたメンバー選びだったと思うんですけど。
「ありましたね。漠然と売れたいというのは考えてました」
●長く続けることについては考えてました?
「それは思ってなかったです。逆に思ってなかった。長く続けたいと思ったことはあんまりないですね。特に若いときは、売れたい、バンドを大きくしたいだけで。僕らの時代はメジャーデビューがすごく憧れだったし、目標だったし、『MUSIC STATION』『HEY! HEY! HEY!』『うたばん』に出るみたいなのが夢だったし。でも、続けることはあんまり考えてなかったかもしれない」
●ほかのメンバーさんに取材をして、DAISHIさんに見る目があったというのが共通する意見なのかなと感じたんですけど、実際どんなところを見てメンバーを探したんですか。
「まず、高校生のときに仲いい子らとバンドを組んだんですよ。それで、友達同士で組んだバンドの良さも悪さも経験したんですよ。その次に、自分がやりたいバンドをやろうと思って、Psycho le Cémuの前身バンドのMYUっていうバンドをやるんですよ。ある程度は演奏もできたけど、やりながらダメなのがすごいわかった。初ライヴの対バンがピエロで、本気でやってるバンドはこうなんだと思ったんですよね」
●そのときのピエロってどれぐらいの時期ですか。
「『パンドラの匣』のツアーでしたね」
●じゃあ、まだ浦和ナルシスのバンドの頃ですよね
「僕らから見たらもう出来上がってるバンドでしたよね。対バンやのに、本番観たもんね。それから、ピエロとDir_en_greyが二本柱で売れていくんですけど、刺激を受けました。それで、自分たちの悪いところも見えてきたし、自分がやりたいことを一回捨てなあかんと思って、そういうのは出さずに組んだのがPsycho le Cémuなんです」
●それはどうしてなんですか。
「もっと戦略的にやらないと売れないんだろうなと思ったんですよね。曲がいいだけでも、ある程度歌えてもダメなんだと思って。お客さんを集めるには何をしたらいいか考えたし、戦略的だったと思います。ヴォーカルやけど、プロデューサー的な感覚でした」
●そう考えたとき、メンバーさんに必要なものは演奏力ではないわけですね。
「MYUはそこそこ演奏ができたから、Psycho le Cémuを始めたときは下手だなって思いました。でも、ほかのバンドがやってないことをやりたかったんですよね、ドラムが踊ってるとか、お芝居をやってるとか。だから、そういうことができるタイプの子を探しましたね。YURAサマにしろAYA君にしろそうです。二人は花形だったと思いますよ。AYA君の前のバンドのライヴを観に行ったら、お客さんはガラガラやけど、AYA君は青のモヒカンで客席から登場して、ステージで頭振りまくってましたよね。とにかく面白くて、AYA君が一番欲しかったです。Lidaさんがギターを弾けるのは知ってたから、AYA君を上手にしたいと思ったんですよ」
●パフォーマー的な華やかさが魅力だったんですね。
「リーダーのほうがギターは弾いてるし、音の面でもちゃんとやってるけど、下手にいてもらうことにしました。AYA君が一番顔がいいのも知ってたし、高校生の頃にもう髪の毛を青にしてたんで、こんだけやる気のある若い子がおるんやって思いました。ギターについては、もう1人欲しい子がいたんですけど、それがこの前UCHUSENTAI:NOIZを脱退したMASATO君なんです。曲も書けるし、欲しいなと思ってて。ほんとはトリプルギターにしたかったから」
●seekさんについては、どういうところを期待して声をかけたんですか。
「seekは単純にカッコいいと思ったんで、あの背格好がよかったんだと思います。スタイルがカッコよくて足が長くて背がシュッとしてて、っていう印象だったから。ヴィジュアル系をやってるような子じゃなくて、スタッフさんっていう感じでしたけど、ライヴを観てカッコいいなと思ったんですよね」
●そういう最初の印象から、皆さんどんどん変わっていってると思うんですけど、どうですか。
「特にAYA君は意外な感じがしてます。曲も作るようになったし、音楽が楽しいんやろうなっていう感じがすごく出てきたのはAYA君ですね。AYA君は結構頑固なんで、いまはこういうギタリストでいたいというのがあるんじゃないですか。それでAYA君がステージで動かなくなったから、たぶんseekが出てきたんだと思います。最初はAYA君がいまのseekぐらい動いてたんですよね。結成当時は、AYA君とYURAサマの人気がすごくて、seekは人気なかったんですけど、動くようになって人気が出てきましたね。Lidaさんも最初は音楽的なところを任せてて、人気が出にくいポジションだと思うけど頑張ってくれと思ってたんですけど、長くやってくると、作詞とか作曲をしてるのもあって、人柄が出るのか人気が出てきましたよね。リーダーとseekは人気が出るのに時間がかかったかな。いまとなったら、上手がseekですよね(笑)」
●いまは、それぞれが自分の判断でプレイとかステージングとかキャラクターを考えるようになってるんですね。
「そうだと思うんですよ。僕、YURAサマにあんなにチョケてほしくなかったっすもん(笑)。僕のブランディングではね、二の線のままのキャラクターでいてくれたほうが戦略的には正しいと思うんですけど、長く続けてると地が出てくるんですよね」
●Lidaさん以外のメンバーさんが作曲するようになったのも、自然な流れでしたか。
「そうですね。イヤな時期もありました。AYA君とseekとかYURAサマが曲を書いてきても、毎回ボツにするしかなかったから。でも、かわいそうやし、曲を書くのが大変なのもわかりますしね」
●それでも、採用できないという判断基準があるわけですよね。感覚的なものではなくて。
「周りから見たら直感めいたものに感じるんでしょうけど、僕の中ではあるんです。理由も言えるし。まだ基準に達してないという自分の感覚があるんです」
●それは、DAISHIさんの好き嫌いではなく。
「多少好き嫌いもあるのかもしれないですけど、そんなに好みじゃないけど、この曲はOKっていうのもありますから」
●DAISHIさんは、音楽性の高さというか、クオリティをすごく重視してるんですね」
「そうだと思いますね。僕らがデビューして、もうひと伸びしなかった理由も絶対あるでしょうし、それは演奏力とか歌唱力も関係してると思います。20代の早めにデビューしたから、もうちょっとゆっくりでもよかったのかなと思ったりしますよね。デビューの時期に、この曲ができてたら違ってたやろうなっていうぐらいのレベルの曲を、いまはやってると思うから」
●でも、Psycho le Cémuと言ったら、音楽とかロックバンドという枠を思いっきり突き抜けたバンドですよね。それなのに、クオリティみたいなところをDAISHIさんがすごく重視してるのが意外というか、面白いですよね。
「派手な格好でエンターテインメントをしてますけど、姫路出身バンドなんで。姫路のバンドは、しっかりしてるバンドが多いんで、僕らはダントツでしっかりしてなかったけど、その血はあるんですよ」
●MASCHERAからの系譜を意識せざるを得なくなる?
「姫路Betaの店長の三四郎さんとかオーナーの田中さんとかにめっちゃ怒られるんですよ。ヴィジュアル系でも、すごく音楽的なところで怒られるから、それが基本なんですよ。だからみんな上手いんですよ、ILLUMINAもTRANSTIC NERVEも。ただ、上手くても売れないバンドもいるからPsycho le Cémuを作ったんですけど、根っこの部分はそういう考え方です」。
朝は早く起きて、半身浴したい
●DAISHIさんが自分自身変わったと思うのはどういうところですか。
「まさか、こんなトレーニングする人になると思わなかったし、お酒も朝まで飲んでたのに、いまはツアー中にseekに誘われても断るような人になっちゃいましたからね。僕が誘ってたぐらいでしたから」
●ちゃんとしなきゃみたいなのがある?
「いや、それは事件があったからじゃないですか。少なからずなるべくちゃんと生きようという気持ちはめちゃくちゃありますよ」
●でも、お酒を飲むとかって法に触れるようなことじゃないレベルの話じゃないですか。
「そうなんですけど、次の日のことを考えたら、飲まないほうが楽しいんですよ。明日ライヴやからって体を整えてるほうがいい。明日歌う予定がない打ち上げやったら飲みますけど、それでもご飯で帰るかな。もう朝まで飲むのが楽しくないんですよ」
●単純にそういう遊びが好きじゃなくなったんですかね。
「そうかも知れない。朝早く起きたいんすよ(笑)」
●起きなければいけないじゃなくて、起きたいんですね(笑)。
「起きて半身浴したいんですよ。ルーティンなんでしょうね。年齢を重ねたということかもしれない。もう半日、二日酔いで死ぬとかイヤなんですよね」
●それはいろいろ経験して、気づいた感じ?
「どうなんでしょう。癖みたいなものになってきたんでちょっとわからないですけど、とにかくそのおかげで声を潰さなくなりましたよね」
●肉体的には調子はすごくいいと。
「調子いいです」
●歳を重ねてきて変化してるみたいなことはあまり感じないですか。
「全く感じないです。むしろ若いときより、体がカッコいいからね」
●疲れが残るとか?
「ないです、ないです。体が痛いとこも全くないです」
●それでも結成から確実に25年は経っていて、そんな2024年にPsycho le Cémuをやっていることについてはどう感じていますか。
「考えてなかったことですけど、僕個人的には幸せなバンド人生だと思います。仲が悪いバンドさんもいらっしゃいますし、僕らより売れてても、人生の豊かさという意味では大変やろうなとか思ったりするときもありますよね」
●こんなに長く仲良くやっていけるというのも、メンバーさん選びで考えたところですか。
「考えてなかったです。でも、Psycho le Cémuのメンバーは性格いいし、人間的に強い人が多いと思いますよ。それはたまたまこの5人でおったからそうなったのか。そういう性格なのか、どうかな。いや、性格いい子が多いと思いますね。それまで僕が組んだバンドは、暴走族からバンドに上がったみたいな子ばっかりだったんですけど、バンドを頑張って一緒にやっていくときに、不良はダメなんですよね、僕が言うのもなんですけど」
●それは何がダメなんでしょうね。
「ある程度、ちゃんとしてる人というのは選ぶ基準の一つではありました。でも、復活してから、年下三人組がこんなにしっかりしたのにはただただ驚きましたけどね。みんな賢くなったと思います。もともとYURAサマとseekは学歴もそこそこいいし、賢いしね」
●バンドに学歴って関係あるんですか。
「節々に出ますよ。二人とも高卒ですけど、いい高校だったから」
●でもやっぱりいろんな経験を積んだのが大きいんでしょうね。
「そうかもしれないですね。あのまま何もなくPsycho le Cémuをずっと続けてたら、年下組はもうちょっと子どもっぽいままだったかもしれないですね。あの間に経験したことは大事なんじゃないですかね」
やりたいやりたくないではなく、ファンが喜ぶかどうか
●さて、25周年記念のライヴが目前ですが、新しいヴィジュアルを見る限り、DAISHIさんが宇宙みたいなイメージからは一番遠いですけど、SFなんですよね。
「はい、SFです。僕はちょっと和な感じもあるんですけど、だいぶ前から温めてるキャラクターで、いつか胴着を着たいと思ってたんですよ。胴着を着て歌ってるバンドいないでしょ(笑)」
●DAISHIさんは、地球の人なんですか。
「アー写の後ろ3人が人類じゃなくて、僕とAYA君は地球の人です。僕とAYA君は、胸にPsycho le Cémuっていうワッペンがついてるんで、地球防衛軍的な一緒のチームなんです」
●なるほど。5月3日のライヴから、そのストーリーが始まるんですね。
「はい。久しぶりにお芝居もします。これからツアーに向けて、どういうストーリーかわかるようなお芝居です。メンバーと、コンセプトとかキャラクターを話し合って。トータルの骨組みを考えて、僕が脚本を書きました。ツアーは、メンバーそれぞれのミッションがライヴのタイトルについているので、お芝居もセットリストも脚本もそれぞれメンバーに考えてもらう企画になっています。自分のミッションのところは、自分を主役にして、自分で書くんで、ファンの人にも喜んでもらえるんじゃないかな」
●ほかのメンバーさんの取材では、早くも30周年の話出ていました。
「30周年は何か大きいことしたいですね。その辺の話し合いもメンバーとしてます。30周年の話はだいぶ前からしてるんですよ」
●これから先もPsycho le Cémuをやり続けるにあたって、こういう派手な衣装とかキャラクターが似合わなくなるかもしれないとか、そういうことは考えたりしませんか。
「やりたい、やりたくないっていう感覚は、もうだいぶ昔にどっかに置いてきた感じかもしれないです。やりたい、やりたくないとか、そういうのはないんです。軸にあるのは、お客さんがどうやったら喜ぶのかですよね、僕らはエンタメなんで。だから、地味にも派手にもできるし、自分らがどうしたいとかっていう感覚ではないですね」
●なるほど。5月3日からは、久しぶりに派手なPsycho le Cémuが観られるわけですね。
「当日券を1100円にするっていう、僕らの実験を試します。25周年の感謝も込めてますけど、バンドとしての挑戦なんです。もともとPsycho le Cémuのライヴに来てた人なのか、来てる人の友達なのか、ちょっと気になってて初めて来る人なのか、いろんな人が来れると思うんで、広がればいいなとは思いますね。そんなにイベントに出たりしてないので、新しい人に観てほしい気持ちが強いです」
●そのためには、いいきっかけになりますよね。
「当日、ふたを開けたらすごい人数が並んでるぜってなったら面白そうですね」